オーバーレイ型ツールは、警告書が指摘するコードを変えません。
オーバーレイ型ツールとは、テーマに貼り付けるだけでストアをアクセシブルにすると謳うスクリプトです。この記事では、公開されている記録だけを扱います。FTC の命令、購入した事業者が起こした訴訟、そして導入済みのまま訴えられたストアの件数です。最後に、今夜あなたのストアでできることを1つお伝えします。
この記事は米国のお客様に販売しているストア向けです。ADA は米国の法律で、米国向けストアフロントに適用されます。
オーバーレイ型ツールとは
オーバーレイ型ツールは、外部の JavaScript です。テーマに1行貼り付けると、お客様のブラウザでページが開くたびにスクリプトが動きます。多くの製品がやることは2つです。1つは、文字を大きくする、コントラストを上げる、書体を変えるといった設定パネルを開く、浮いたボタンを追加すること。もう1つは、ページの読み込み中に修復を試みること、つまり名前のないボタンに名前を、画像に説明を付けることです。
パネルはお客様に見える部分です。修復のほうが、売られている部分です。
パネルがあまり役に立たない理由。文字の拡大やスクリーンリーダーが必要な方は、その機能をすでに OS か購入したソフトウェアに持っていて、どのサイトでもそれを使っています。あなたのストアでしか動かないパネルは、探す手間が1つ増えるだけです。
FTC が accessiBe に禁じたこと
2025年1月3日、Federal Trade Commission(FTC、米国連邦取引委員会)は、accessWidget というオーバーレイ型ツールを販売する accessiBe に対する申立てと命令案を公表しました。FTC は、製品についての同社の説明が虚偽・誤解を招くもの、または裏付けを欠くものだと主張しています。宣伝どおりに、利用者のすべてのウェブサイトが Web Content Accessibility Guidelines を満たす状態にはならなかった、という主張です。申立てでは、第三者の記事やレビューを、書き手との関係を明らかにしないまま独立した意見のように見せていたことも主張されています。
2025年4月22日、委員会は3対0で命令を最終確定しました。100万ドルの支払いを求めるもので、FTC はこれを返金に充てる可能性があるとしています。命令は、裏付けとなる証拠がない限り、自動化された製品によってどのウェブサイトでも WCAG を満たせる、あるいは満たし続けられる、と表示することを同社に禁じます。レビューを、中立な利用者による独立した意見であるかのように示すことも禁じています。
これは表示・宣伝についての命令です。そのソフトウェアがあなたのストアで何をするかを述べたものではありません。同社がもう何を約束できないか、を述べたものです。
私たちの助言「このスクリプトを入れれば WCAG を満たします」と言う業者がいたら、日付と対象ページを明記して契約書に書いてもらってください。FTC の命令があるため、今はほとんどの業者が書かないはずです。
購入した事業者が法廷で述べていること
ニューヨークの医院と楽器店が、連邦裁判所で accessiBe を訴えています。事件名は Sherwin K. Parikh, MD, P.C., d/b/a Tribeca Skin Center, and Dillon Music v. Accessibe, Inc.、事件番号 1:24-cv-04848、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所です。最初の訴状は2024年6月26日に提出されました。
2025年6月9日付の決定で、裁判官は事件の前提を1文にまとめています。accessiBe は、ウェブサイトが Americans with Disabilities Act(ADA)を完全に満たすことを保証する、効果的で速く費用も抑えられる手段として、サブスクリプション型の製品を販売しているが、約束したサービスを提供しなかった、というものです。原告は契約違反、黙示的保証違反、過失による不実表示など6つの請求を立てています。この決定により訴状の補正が認められ、3社目の事業者と FTC の手続きへの言及が加わりました。同社の却下申立ては、その結果として意味を失ったものとして退けられています。
これらはいずれも主張です。真偽について裁判所の判断はまだ出ていません。私たちが2026年9月7日に記録を確認した時点で、確定判決は記載されていませんでした。
この事件だけを挙げる理由。ここまでの内容はすべて、日付とともに公開記録に載っています。自分で開いて読めないことは、企業について書きません。
導入済みのストアも訴えられています
UsableNet は、連邦裁判所と、この種の事件が多く提起される州裁判所でのウェブアクセシビリティ訴訟を集計しています。2025年6月までのデータをまとめた同社の2025年中間レポートでは、上半期に2,019件の訴訟が提起されたと数えています。
同じレポートは、すでにウィジェットを入れていた企業に対して提起された件数も数えています。1月85件、2月119件、3月132件、4月105件、5月119件、6月99件です。半年で659件になります。レポート自身の読み方は、こうしたツールは原告や法律事務所が指摘するコード上の問題を直していないことが多く、追加されるパネルがスクリーンリーダーの操作を妨げることがある、というものです。
警告書は私信なので、誰も数えていません。訴訟は目に見える部分で、数えられる部分です。
毎日サイトをテストしている人たちの評価
WebAIM はウェブアクセシビリティの実務者を対象とした調査を行っています。2021年に公開された3回目の調査では、回答者の67パーセントがこうしたツールを「まったく効果がない」または「あまり効果がない」と評価しました。障害のある回答者ではその割合は72パーセントで、「非常に効果がある」と答えたのは2.4パーセントでした。
overlayfactsheet.com には Overlay Fact Sheet という公開文書もあります。アクセシビリティの専門家、WCAG や ARIA の仕様の執筆者、JAWS や NVDA の開発に関わる人、スクリーンリーダーの利用者が署名しています。その結論は、市場にあるどのオーバーレイ型ツールも、ウェブサイトをアクセシビリティ基準に完全に適合させることはできない、というものです。署名者は、問題はサイト自身のコードで直すべきだと一貫して主張しています。
accessiBe 側の説明
同社は、逆の結果になった事件について自社の説明を公開しています。2025年3月4日に最終更新された記事で、ニューヨーク東部地区連邦地方裁判所の Erkan v. David A. Hidalgo, MD, P.C. を取り上げています。被告がサイトに加えた変更を、accessWidget の利用も含めて裁判所に示し、訴えが却下された事件です。同社は、それらの措置とアクセシビリティウィジェットの利用によって、指摘された問題が再発しないと裁判所が判断した、と引用しています。
ぜひ読んでみてください。1件の却下、1件の事件、しかもストアが変更を加えたうえでスクリプトも入れていた事例です。同社がこれを公開するのは公正なことですが、製品が仕事をしたことと同じではありません。
スクリプトに肝心な部分ができない理由
警告書を読むと、挙がる項目は短いリストです。説明のない商品画像、スクリーンリーダーが名前を読めないリンクやボタン、ラベルのない入力欄、コントラストの足りない文字、見えない、あるいは抜け出せないキーボードフォーカス。お客様のブラウザで動くスクリプトは、そのほとんどで壁にぶつかります。
- 写真に何が写っているかを知りません。指輪の代替テキスト(alt)には、素材、石、留め方を書く必要があります。それはあなたの商品データであって、画素からの推測ではありません。
- ボタンが何をするかを知りません。スクリプトが「ゴールド」と名付けたスウォッチは、「ゴールド、14金、在庫あり」と読み上げるスウォッチとは違います。
- デザインを変えずにコントラストは直せません。測定を通すために文字を塗り直せばストアの見た目が変わるので、その作業の多くはパネル任せになります。パネルはお客様が自分で見つけて有効にしなければなりません。
- ページより後に動きます。最近のテーマやアプリは、お客様の操作に合わせてページの一部を描き直します。スクリプトが動いた後に描き直された部分は、直りません。
- ほとんどのプランでチェックアウトには触れません。そのコードは Shopify のものです。
そして修正そのものは大きくありません。リンクとボタンの名前は、テーマのいくつかのテンプレートにあります。ラベルは入力欄1つにつき1行です。代替テキスト(alt)は一度書いて一括でアップロードします。私たちの最初の事例のストアでは、商品カードのテンプレートの1行で、名前のないリンク490件がゼロになりました。
私たちの助言すでにオーバーレイ型ツールが入っているなら、金曜日に誰にも言わず外すのはやめてください。まず検証用のコピーで無効にし、両方で診断を実行して、スクリプトが実際に何を支えていたかを確認します。カートのボタンに名前を与えているのがそれだけ、という場合もあります。外す前に、その名前をテーマ側に持たせておいてください。
今夜できること
無料の Storefront Check(無料ストア診断) にストアのアドレスを貼り付けてください。トップページ、コレクションページ1件、商品ページ1件を実際のブラウザで開き、約20秒で13項目の実測値を返します。画像が何枚あり、ボタンが何個あり、リンクが何本あり、そのうち何件が不合格だったか。無料で、1分で終わり、結果は開発者にそのまま渡せるリストになります。
そのあと、2分でできる確認をご自身でどうぞ。いちばん売れている商品ページで Tab キーを押し、カートに入れるボタンまで到達して、そこから抜け出せるかを見てください。スマートフォンで VoiceOver か TalkBack を有効にし、コレクションページをスワイプして、「リンク」とだけ読み上げられる箇所がないか聞いてください。この2つで、スクリプトが隠していたものが見つかります。
私たちのやり方。私たちはテーマを直します。どのストアでも、どんな理由でも、オーバーレイ型ツールは入れません。そのうえで、人がキーボードとスクリーンリーダーで再テストし、何が変わったかを日付入りのレポートでお渡しします。
出典
- FTC、2025年1月3日。「FTC Order Requires Online Marketer to Pay $1 Million for Deceptive Claims that its AI Product Could Make Websites Compliant with Accessibility Guidelines」 ftc.gov
- FTC、2025年4月22日。「FTC Approves Final Order Requiring accessiBe to pay $1 Million」 ftc.gov
- 2025年6月9日付の決定。Sherwin K. Parikh, MD, P.C. v. Accessibe, Inc.、1:24-cv-04848(S.D.N.Y.)、文書55。 courtlistener.com、および 事件記録。
- UsableNet、2025年6月。2025 Midyear Digital Accessibility Lawsuit Report usablenet.com
- WebAIM、2021年。Survey of Web Accessibility Practitioners #3 Results webaim.org
- Overlay Fact Sheet。overlayfactsheet.com
- accessiBe、2025年3月4日 最終更新。「A court’s landmark ruling affirmed accessWidget’s role in advancing accessibility」 accessibe.com
いずれも私たちが実際に開いて確認したものです。書面上の主張である場合は、そう書いています。